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国債を発行して景気対策している場合ですか

2003年1月10日

宇佐美 保

 「銀行と株(吉田春樹著:2001年9月20日:東洋経済新報発行)」の164ページには、驚くべきデータが載っていました。

このデータは、みずほフィナンシャルグループの日本興業銀行調査部が作成した資料からでは、2000年末の日本の個人資産1390兆円の内、民間預金が、465兆円であって、そのうち企業向けの貸出金は206兆円(約44%)しかないのです。そのうちの92兆円(約45%)は、驚くなかれ建設、不動産、卸小売業界へ振り向けられているのです。

そして、同著の68ページには、元興銀幹部の吉田氏は次のような事を平然と書いています。

二〇〇一年春に浮上した不良債権の最終処理問題では、特に大手銀行が抱える破綻懸念先以下(破綻懸念先、実質破綻先、破綻先)の債権が最終処理の対象になると伝えられた。多くの国民は、いよいよこれまで話題になっていた大手ゼネコンや不動産会社、大手流通業者がその対象になるのではないかと期待したに違いない。しかし実は、これらの企業の多くは、金融機関に債権放棄をしてもらうなどすでに経営改善計画をまとめ、建前上、再建は順調に進んでいることになっているのだ。債権放棄ということは、金融機関が「絶対につぶすつもりはない」と言っているようなもので、経営の実態がどうであれ、破綻懸念先と認定されるような不良債権ではないのである。金融業界では、実際に対象になるのは、もう少し規模の小さい企業ではないかと囁かれている。

 事実、私たちの預金の大半を飲み込んでいる、大手ゼネコンや不動産会社、大手流通業者は倒産することなく、銀行から債権放棄をしてもらっています。

ですから、私たちのお金の約半分は勝手に不良ゼネコンらにつぎ込まれてしまっているのでしょう。

そして、今日も西武百貨店が2000億円もの債権放棄を、体たらく銀行の一つのみずほ銀行に要請したとの事です、しかし、この事実にマスコミは怒りの声を上げません。何故?

 なのに私たちが助けたい中小企業には、私たちの預金の何%が廻っているのでしょうか?

廻っているどころか、BIS基準8%死守の仮面をかぶった銀行の貸し剥しの魔の手が伸び伸びているとは一体何事ですか!

そして、債権放棄したといっても、不良ゼネコンへの融資が今後とも不要ということではないでしょうから、貸し剥しされたお金が不良ゼネコンなどへ融資されていないと誰がいえましょうか?

 

 そして、またまた驚くことは、民間預金の内187兆円(約40%)は、国・地方等公共の債務に廻っているのです。

更に驚くことは、郵便貯金の255兆円の大半、そして、投信・年金・保険などから158兆円と、私たちの金融資産は、(私たちの直接的な承諾も無く、知らない間に)合計で607兆円(約44%)も国・地方等公共の債務につぎ込まれているのです。

そして、吉田氏は、次のように書いています。

この国・地方等の公共部門の債務とは何か。いうまでもなく、国債などのほか、公共関連セクターの債務である。近年の構造改革のなかで注目され始めている特殊法人、すなわち、特別の法律によって設立された公庫、公団、事業団などがこれに含まれる。この公共関連セクターの不良債権問題は、民間金融機関の不良債権に劣らず大きな問題である。

なぜ、国民の金融資産がかくも大量に、何の疑いももたれずに公共関連セクターに流れ込んでいるのか。それは、この部門が完了の天下りの温床になっていて、市場原理が働かないからである。公共関連セクターは巨額の不良債権を抱えているのだが、その経営の実態がほとんど明らかにされていないうえ、政府の事業に対する信頼があるため、国民は自らの貯蓄資金に関する安全性について疑問を抱いていないのである。手っ取り早く言えば、資本主義国家日本の中に巨大な共産主義国家を飲み込んでしまっているようなものなのだ。安全資産指向の国民が、その共産主義国家というもうひとつの日本は、せっせと甘いミルクを注ぎ込んでいるのだ。しかし、国民もこの構図にぼつぼつと気がつき始めたように思われる。これからが大変である。

吉田氏は“政府の事業に対する信頼があるため、国民は自らの貯蓄資金に関する安全性について疑問を抱いていないのである”と書かれていますが、私達は政府の事業などを信頼していません、ただこの実態に無知であったのです。

そして、腐った政治家達は、私たちの金融資産を、私たちに断りもなくドンドン食い尽くしてゆくのです。

ですから、彼等は、いくらでも平気で国債を発行するのでしょう。

 吉田氏の、“資本主義国家日本の中に巨大な共産主義国家を飲み込んでしまっているようなもの”との表現はある意味で確かです。

なにしろ、私たちの金融資産の内、株式に向けられたのは、直接的に66兆円(4.7%)、間接的に62兆円(4.5%)しかないのですから。

このような状態を、吉田氏は“日本では個人投資家が育っていないから”と、彼の著作のいたるところで書いています。

 

吉田氏は、何故このように私達を見下した見解も持つのでしょうか?

(しかし、吉田氏は、証券会社に出向した体験があるそうですから、証券会社時代に私達をドブ呼ばわりしていたからでしょうか? )

彼の著作の中には、次のような表現があるのにも拘らずです。

 株式の収益率はといえば簿価ベースでみても、ましてや時価ベースでみても、けっして高くなかった。右肩上がりの成長に慣れたわが国では、金利に対して、株の利回りが低かったからである。しかし、銀行は、そのことはあまり意に介さなかった。 なぜならば、収益は、貸出金利や為替手数料など、その他のビジネスで回収できればいいと考えていたからである。それに、持ち合いで相手企業に持ってもらっている自らの株も、けっして利回りの高いものではなかった。

(下線処理は私が施しました)

こんな利回り無視の株を誰が個人的に買いますか?

こんな株を証券会社は私たちに押し付けようとしていたのです。

 

 そして、吉田氏は、資本主義先進国の外国投資家たちへ次のような見解を披露しているのです。

 外国人投資家は、持合解消株の唯一の本格的な受け皿といってもいいかもしれない。

しかし、偏見があるわけではないが、彼らは怖い。なぜならば、プロフェッショナルであるからだ。実は、彼らの方も日本株を虎視耽々と狙っているが、けっして無駄な動きはしない。株価が高すぎると思えば、値が下がるまでじっと待つのだ。持合解消株の売りが出るときに、彼らが買わなければ買い手がいないのであるから、値は下がるわけだ。

 ……

 いずれにせよ、銀行など市場参加者を含め、市場関係者が彼らをひどく警戒していることだけは事実である。やがて、ある事業会社が彼らに気に入られ、彼らが株主として居座ると、今度は経営に対しコーポレート・ガバナンスを厳しく求めてくることになるだろう。しかし、彼らを拒む理由はまったくない。もしスキがあるとすれば、それは日本側の問題である。ただ、持合株式の解消、すなわち銀行が株式を手放すということは、こういう問題にまで発展する可能性があることだけは心得ておいた方がいいだろう

(下線は私が施しました)

 この抜粋文を読まれて皆様はいかが思われますか?

私は、吉田氏が資本主義をどのように考えておられるのか不思議になります。

株主が、経営に対してコーポレート・ガバナンスを厳しく求めるのは当然ではありませんか!

 

日本最高の優良企業であるトヨタ自動車の株価は現在ほぼ3100円ですが、配当金は28/年・株ですから、配当利回りは、0.9%でしかありません。

なのに、トヨタは、不良企業のUFJ銀行や、トーメンに出資したりしています。

これで、トヨタの株(日本の株)を買う個人投資家がいたら、“株は、配当金よりも、株価の値上がりで利益を得るのだ”との、とんでもないデマに踊らされる気の毒な人たちです

私が株主なら、そんな金があるなら、配当に廻せと喚きます。

 これでは、早く外国人投資家が日本に乗り込んで、日本の株式市場を正常化して欲しいと私は期待したくなります。

 そして、こんな状況で、日本は資本主義社会といえるのでしょうか?

銀行だけではなく、産業界全体が護送船団構造ではありませんか!

目先の景気対策をやっているよりも、小泉首相が宣言していたように、先ずは“構造改革”ではありませんか!

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